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教科としての地学と興味としての地学

エデュ・プラニングの理科課です。

2022年の高校教科書改訂で「地学」の教科書の出版社がついに2社→1社になりました。
たしかに、「地学」は履修者が少ない科目であり、教科書の出版社としても、様々な要素を検討した上での判断だったのだと思います。

まず、なぜ「地学」の履修者は少ないのでしょう。
地学教職員の採用枠が少ないということにより、教員自体が不足して開講できないという学校もあるようです。
さらに、理科科目は「基礎」課程を履修しないと「応用」課程が選択できないというしくみがあるため、文系か理系か迷っている生徒の気持ちとしては、物理・化学・生物の「基礎」科目をおさえておく方がリスクは少ないこともあるのかもしれません。

『ノーベル地学賞』がないからでは? なんて説もありますが、地学分野での受賞者がいないわけではありません。
2021年には、約60年にわたって気候変動について研究を行ってきた真鍋淑郎氏がノーベル物理学賞(しかし、内容は明らかに地学)を受賞していますし、日本人で初めてノーベル賞候補にノミネートされたのは“地震学の父”ともされる大森房吉氏です(大森氏は辞退していますが)。
しかし、これは研究者まで進んだ人たちのモチベーションであって、高校理科の履修を決める理由となると疑問です。
やはり、受験に不利な科目という認識が強いのかもしれません。

受験科目を考えると仕方ないような気もしますが、とはいえ地学自体は面白い学問なので、最初から選択肢に入らないのも少々残念です。
そもそも地学は“地球科学”の略称であり、地質学・鉱物学・岩石学・地球物理学・地球化学・地震学・気象学・海洋学など、私たちの住んでいる地球を丸ごと学べるサイエンスです。今回は、そんな地学について話してみたいと思います。

地球がどうやって誕生したのか、
地球はなぜ太陽の周りを回るのか、
恐竜のいた時代がいつなのか、
地震や火山はどうやって起こるのか、
地球ではたらく力とは何か、
なぜ雨が降るのか…

そんな身近ながらも直接見たわけではない知識は、いずれも地学分野の研究者たちからの賜物です。
もちろん、前出の真鍋氏もその一人です。
温暖化について初めて世界会議が開かれる20年もの前から研究を始め、現代気象の研究の礎を築きました。
研究当初には一般に認知されていなかった温暖化も、現在では誰もが知りうる事象です。

中学校までの試験に出てくるものといえば、火山や地震、地層の読みとり方などが頻出単元ですが、「地学」にはもっと多くのジャンルがあり、大学ではさらに専門的に学べます。
さらに、少し歩けば地層や岩石、鉱物(石)などの“素材”に行き当たる身近な科目でもあります。
また、地学の研究では、物理・化学・生物の知識も必要なことが多いです。そのため、高校で「地学」を履修することができず、「物理」・「化学」・「生物」を履修したとしても、地学博士になる道が閉ざされるわけではありません。

物理学と数学の知識が必須な宇宙分野、
化学と地理学の知識が必須な気候分野や地球環境分野、
生物学の知識が必須な古生物分野、などなど…

地学はほかの科目とも密接にかかわりながら発展してきたからです。

最後に、宮沢賢治の作品を引用しながら「地学」の基礎を解説する参考書を紹介させていただきます。
導入として、手に取ってみるのもよいかもしれません。

『宮沢賢治の地学教室』柴山 元彦・著 (創元社)

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